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「なぜあなたは走るのか?」がんを乗り越えたランナー、トミー・リブズの答え

トミー・リブズ(本名:トミー・リバーズ・ブゼイ)は、数々の大会で活躍してきたプロランナーです。
2020年、彼はがんを患い、肺活量の75%を失いました。そして今、彼は再びボストンマラソンに挑みます。
トミーはこう語ります。

「速く走るために走っているわけではありません。ただ走ることが好きなんです。人間は、そんなふうに作られているんだと思います。
たとえば、もし鳥がケガをして治療を受けた後、『なぜ飛びたいの?』と聞かれたら、鳥はきっと『だって私は鳥だから』と答えるでしょう。
走ることは、私が自由を感じられる場所であり、心の平穏を見つけられる場所です。成長や心の明晰さを体験できる、大切な時間なんです。それは瞑想のようでもあり、穏やかで、心が静まる瞬間でもあります。これこそ、人間としての本質的な表現だと思います。」

トミーが走る理由

2017年、トミーはボストンマラソンで人生最高のレースを走りました。1マイルあたり平均5分17秒、総合16位、記録は2時間18分20秒。
しかし、がんを経験した今、こう感じています。
「速く走れなくなったということ以外、あまり変わったとは思いません。今では30秒ほど走り、15~20秒休んで、また30秒走る、という繰り返しです。
心肺機能から言えば、がんを患った時点で私は87歳くらいの状態でした。だから、その数字が今の自分を象徴しているのかもしれません。一緒にレースに出られるかはわかりませんが、ここにいる限り、挑戦し続けたいです。
私がやっているのは、可能性を広げるためにできる限りのことをすることです。そして、それが治療を乗り越えられるかどうかに繋がると信じています。」

トミーにとって、走る理由は変わりません。
「人が困難に直面したとき、気概や決意を持ってそれに向き合うのは、自分自身に『乗り越える力がある』と示すためだと思います。このスポーツが私を惹きつける理由もそこにあります。より良くなりたい、というシンプルな想い。それは今も昔も同じです。
朝起きて、その日にやるべきことを決め、それを実行する。それが以前のように戻ることを意味するわけではありません。でも、それが目標というわけでもないんです。新しい自分の可能性を最大限に引き出すこと。それが今の私の挑戦です。」

トミーは今回、4時間53分44秒でゴールしました。
「ゴールした瞬間、まるで星を眺めているような感覚でした。実は、最後までゴールできるか不安だったんです。ゴールラインにたどり着く前に気を失ってしまうんじゃないかって。だから、ゴールできたときは心の底からホッとしました。本当に気持ちよかったです。」
そして、こんな言葉を残しました。
「『なぜ走るの?』と聞いてくるのは、大抵の場合、走らない人なんです。もしその人が実際に走っていたら、そんな質問をする必要はないはずです。もう自分で答えを知っているでしょうから。」

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