阪急うめだ本店が2023年4月に開設した新コンセプトフロア「GREEN AGE」。そこにCRAFTは4月30日より店舗をオープンした。今回は、阪急うめだ本店の西島祥浩氏とCRAFT Japanの薮崎敬祐の対談により、このGREEN AGEでCRAFTを展開することになった経緯や、ランニング市場、アスレジャーなど大阪のランニングを取り巻く状況についてCRFAT Magazine編集部が聞いた。
「ぜひお客さまに紹介してみたい」と思ったのがきっかけ(西島氏)
薮崎:2月にCRAFTに届いた一通のメールから今回の出店へとつながりました。あの阪急うめだ本店からのお誘いに最初びっくりしたことを覚えています(笑)。最初に西島さんにお伺いしたいのですが、CRAFTにお声がけいただいた理由を教えていただけますか?
西島氏:阪急うめだ本店8Fの「GREEN AGE」は、「人と自然の共生」と「サステナビリティ」をテーマにしたフロアです。さらに、日常生活に自然を生活に取り入れることをテーマにした「グリーンネイバーフットライフ」と、ウェルビーイングやサステナビリティをテーマにした「グリーンウェルネスライフ」で構成されていて、今回CRAFTさんに出店いただいたのが「グリーンウェルネスライフ」です。そこでは、かっこよく自分の生活を高められたり、健康や体調を整えられるようなブランド様にご出店していただいています。CRAFTさんが日本上陸されたと聞いて、「これはぜひお客さまに紹介してみたい」と思ったのがきっかけです。
薮崎:ありがとうございます。CRAFTは創業した1977年から、ランニング、サイクリング、クロスカントリースキーなど、北欧ならではの厳しい自然と向き合うアクティビティ向けの製品を愚直に作り続けてきて、でも正直、私が関わり始めた2年前だと、機能は圧倒的に高いもののデザインはちょっとイケてなかったんです。それが、アディダスのフットウェアデザイナーだったEric Sarin(エリック サリン)率いるデザインチームが加わり、「どうやってCRAFT独自の高い機能性・耐久性を新たなフォルムで実現できるか」に取り組み始めて、そして今年の2月に新製品として日本で販売することができるようになりました。
西島氏:CRAFTさんの新製品の情報を見て、機能性はもちろん、カラーリングやデザインが非常に新鮮だなと感じました。今はまだ日本ではあまり知られていない分、感度の高いお客様に響くだろうなと思ってお声がけしました。
薮崎:同じフロアにOn(オン)さんやSALOMON(サロモン)さんなど、かなり多くのランニングシューズブランドがいらっしゃるなと感じます。大阪でのランニング市場は伸びているのでしょうか?
西島氏:ランニング市場は急成長していますね。阪急うめだ本店でもランニングシューズやスニーカーの売上は大幅に伸びています。さらにインバウンド需要も増え、日本ならではのユニークな商品を求める声が高まっているのです。
薮崎: CRAFTは「履き心地」や「走り心地」が他のシューズとは違っていて、よく「新感覚」なんて言われます。西島さんにも履いていただきましたがいかがですか?
西島氏:履き心地の良さと機能性には驚きました。最初にPacer(ペーサー)を履かせていただいて、今までにない履き心地で本当にびっくりしました。さらにその後、Kype Pro(キーププロ)も履いたんですが、これもまたさらに全然違う感覚で、同じシューズでもこんなに違うものなのかと。こういう言い方もなんですが「履かせたら勝ちやな」と思いましたね。
薮崎:CRAFTは2月以降、東京では試し履き会なども始めていたのですが、やはりシューズは履いていただかないと始まらなかったりするので、今回大阪で出店できて関西圏でもぜひいろいろなランナーに気軽に足を運んで試していただければと考えています。

これからのブランドは、どう「サステナビリティ」と向き合うべきか
薮崎:GREEN AGEは、サステナビリティをテーマにされているということでした。「サステナビリティ」や「SDGs」を謳ったブランドはたくさんありますが、阪急うめだ本店として、どのような基準で招致するブランドを見極めているのでしょうか?
西島氏:正直に言えば「サステナブルだから買う」という要素のみで、購買につながることは難しいと思います。『快適』『便利』『かっこいい』『かわいい』といった、本能的に“欲しい”と思える要素だったり、生活をより良くしてくれるという価値をまずは求められます。その上で、自然にサステナブルな要素が取り入れられていることが理想的ですね。CRAFTさんはまさにその条件に合致していると感じます。
薮崎:サステナブル、SDGsを全面に押し出している商品が一時期もてはやされましたが、機能だったり味だったりデザインだったりを犠牲にしているようなものは、最近では減ったように思います。
西島氏:サステナブルであることは、もはや差別化要素ではなく基本的な条件になっています。CRAFTさんのように機能性やデザインを伴い、お客様の日常生活に自然と融け込み、しっかりと根付けるような商品が求められているのではないでしょうか。 薮崎:そうですね。サステナブルというと「環境に優しい」というイメージになりがちですが、本来的には「持続可能性」で、それが地球・環境だったり社会だったり個人だったりといろいろな側面において考えていかないといけない重要な要素だとは思います。ですが、それだけだとこう言ってはなんですが、ちょっと説教くさいというか“正しいんだけど欲しくはないな”というものになってしまいますよね。CRAFTはもちろん地球環境のことも考えていますが、まずは、ランナーがどういうシューズというパートナーがいればランニングが安全で楽しいものになるかを考え続けています。
アスレジャーは日本独自の進化を遂げている
薮崎:高機能なランニングシューズをファッションとして普段履きされる方も多いです。アスレジャー(※)ブランドとしてはlululemonなどが世界的に有名ですが、西島さんはアスレジャー市場について、どのように捉えていますか?
※編集部注|アスレジャー:アスレチック(Athletic:運動競技)とレジャー(Leisure:余暇)を組み合わせた言葉で、スポーツウェアを普段着としても着用するファッション。
西島氏:欧米では身体のラインがはっきり出るフィットネスウェアを日常使いするスタイルが主流ですが、日本ではさすがにそこまでピタッとしたものを着ている方は少ないかと思います。ただ、そもそものファッションアイテムへの要求として、デザイン性だけでなく高い機能性も両方求めるお客様は増えているように感じますね。
薮崎:そうですね。少し前に話題になりましたが、作業服大手のワークマンが「ワークマン女子」のような一般人向けの店舗を出すなど、職人などのスペシャリスト向けに磨いてきた技術や哲学が一般の方にも広まるブランドが増えてきたように思います。
西島氏:日本のお客様は非常に目が肥えており、単に見た目が良いだけでなく、快適さや耐久性などの実用性も同時に求める傾向があります。特にコロナ禍以降、在宅時間が増え、健康志向やウェルビーイングへの関心が高まったことで、アスレジャーはファッションの一部からライフスタイルそのものに進化したのではないでしょうか。
薮崎:CRAFTは変わった色使いをするシューズも多いんですが、Pacer(ペーサー)は黒、白、グレーといった日常に溶け込める色もありかなり人気です。機能性だったりデザイン性だったり、あとはそのブランドの哲学や物語を「さりげなく主張」できるブランドが日本では支持されやすいように感じます。「あ、それを履いてるなんて通ですね」「気づかれちゃいましたか」といった、阿吽の呼吸を楽しむような。
西島氏:確かにPacer(ペーサー)は、日常履きしやすそうだけど、個性的でもありますよね。
薮崎:ミッドソールやアウトソールが意外とシューズの印象を決める大事な要素だと思っています。Onさんはミッドソールがユニークですし、CRAFTもミッドソールをスタイリッシュにしつつアウトソールも独特な形状にしています。
西島氏:やはりCRAFTをぜひ一度見ていただいて、履いていただきたいですね。
薮崎:そうですね。ぜひ阪急うめだ本店で試していただければと思っています。私も出身が関西なので、西島さんたちとともに関西のランニング業界を盛り上げていきたいと思っています。ぜひ今後ともよろしくお願いします。
西島氏:こちらこそ、引き続きよろしくお願いいたします。

CRAFT 阪急うめだ本店 店舗概要
- 〈店舗名〉CRAFT 阪急うめだ本店
- 〈場所〉阪急うめだ本店 8F GREEN AGE
- 〈住所〉〒530-8350 大阪府大阪市北区角田町8-7(アクセス)
- 〈営業時間〉午前10時-午後8時 ※営業時間、定休日などは阪急うめだ本店に準じます。
- 〈営業期間〉2025年4月30日(水)~7月31日(木)
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