近年、世界的に「ウェルネス」や「ウェルビーイング(Well-being)」、「サステナブルなライフスタイル」が注目されています。その中でスウェーデンでは当たり前のように浸透しているのが 「Hälsans Stig(ヘルサンスティグ)」 です。直訳すると「健康の道」という意味を持ち、日常の中に健康的なライフスタイルを自然に取り入れる仕掛けとして設計されています。本記事では、このヘルサンスティグの概要、スウェーデンにおける位置づけ、日本での応用可能性、そして観光や地域活性化との関わりについて詳しく解説していきます。
Hälsans Stig(ヘルサンスティグ)とは?
スウェーデンの街には至る所に、ウォーキングやランニングができる専用の「ヘルサンスティグ」と呼ばれる道が設けられています。そこには目印となる看板が設置されており、誰でも気軽に利用できるようになっています。まさに日常生活に健康や運動というものが溶け込んでいる、スウェーデンのライフスタイルでもあるのです。
この仕組みのポイントは以下の3点です。
- 日常の延長線にある健康習慣
「わざわざ運動をしに行く」のではなく、生活の動線の中に自然と健康行動が組み込まれています。 - 自然を楽しみながらの運動
森や湖、公園などの自然と一体化しており、ウォーキングやランニングそのものが新しい発見や癒やしの体験になります。 - 交流の場としてのランニング
走ることを「黙々と一人で行う」だけでなく、仲間や地域の人々との交流の場ともなっています

アスレジャーとも親和性が高い
ここ数年、世界中で注目を集めているファッションスタイルが 「アスレジャー(Athleisure)」 です。スポーツウェアを普段着として取り入れるスタイルで、ジムやランニングに出かけるときだけでなく、オフィスやカフェ、旅行など日常のあらゆるシーンで着こなされるようになっています。
※「アスレジャー(Athleisure)」は、Athletic(運動・スポーツ)とLeisure(余暇・日常)を組み合わせた造語で、スポーツウェアを日常着として楽しむファッションスタイルを指す
ヨガやランニング、ジム通いなど、健康的なライフスタイルが世界的に浸透したことが大きな要因です。運動の前後で着替えるのではなく、最初から「街にも出られる」ウェアを選ぶ人が増えたのです。そして実はヘルサンスティグは「アスレジャー(Athleisure)」というファッション・ライフスタイルとも親和性があります。日常着としても利用できるスポーツウェアを身にまとい、通勤途中に走ったり、仕事帰りに自然の道を歩いたりする。そうした日常生活と運動(健康)がシームレスにつながっているライフスタイルが世界的に受け入れられ始めているのです。

ヘルサンスティグと地域活性化
Hälsans Stig(ヘルサンスティグ)は単なるウォーキング・ランニングコースにとどまらず、地域振興や観光の起点としても注目されています。
たとえば、
- ランニング大会やイベントの開催
地元ランナーや県外の参加者を呼び込み、交流や地域経済の活性化を促進。 - 観光資源と結びつけるコース設計
地域の観光名所をつなぎ合わせ、走りながら観光を楽しむ「ランニング観光」を実現。 - 食文化とのコラボレーション
コース途中にカフェや名産品ショップなどの地元の店舗を組み込み、「パンマラニック」や「かき氷ラン」といった食と運動を組み合わせた新しい体験を提供
これらは「ウェルネスツーリズム」の具体的な形として注目されています。
日本での応用可能性
健康増進施策として
日本でも「健康寿命の延伸」が重要な社会課題となっています。ウェルビーイング(Well-being)※を掲げる自治体がヘルサンスティグのような仕組みを導入すれば、住民が日常的に運動を続けやすい環境を作り出せます。
※世界保健機関(WHO)憲章によると、「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.」(健康は、「病気や衰弱の状態ではない」ということではなく、肉体的、精神的、そして社会的に、すべてが満たされた状態にあることをいう)と説明されている。
観光資源との融合
日本各地の観光名所や自然景観を結ぶランニング・ウォーキングルートを整備すれば、国内外からの観光客に「体験型観光」として提供可能です。
コミュニティ形成
ランニングやウォーキングを通じた地域住民同士の交流や、インフルエンサーを招いたイベント開催によって、新しいコミュニティ形成にもつながります。
スウェーデンのHälsans Stig(ヘルサンスティグ)は、日常生活の延長線上に健康や運動を位置付け、運動を「特別なこと」から「日常の楽しみ」へと変えることでもあります。今後、超高齢化社会を迎える日本にとって、豊富で多様な地域独自の資源と組み合わせることができるHälsans Stig(ヘルサンスティグ)は、新たなライフスタイル、地域創生につながるのではないでしょうか。
CRAFTはこうしたHälsans Stig(ヘルサンスティグ)を、積極的に日本でも推進していきたいと考えています。ぜひご協力いただけますと嬉しいです。

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