走る理由は、人によってさまざまだ。記録更新のため、日々のリフレッシュのため、体型維持のため、他のスポーツの基礎練習のため、走った後のビールは特に美味しいから。走ることに大層な理由はいらない。でも走ることから見える人生や生活は、多くのランナーや、これから走り出そうとする人たちの背中をそっと押してくれるはずだ。
CRAFT Magazineは、「CRAFT YOUR ADVENTURE.(冒険に走り出そう)」を合言葉に、さまざまな分野で活躍する方に、ランニングを通した人生や生活についてお聞きしていく。
「携帯を持たずに1時間走る。その時間に、仕事のことや決めたいことを整理していくんです」と話すのは、起業家の仲真良広さん。26歳でダイエット目的に走り始め、29歳でフルマラソン2時間41分の自己ベストを達成。子どもの誕生を機に一度は走る距離を抑えながらも、40代に入った今、再び本気で記録更新を目指しています。
「走ることが、仕事にも、家族との時間にも、そして自分自身の機嫌にも影響してきた。」
そんな仲真さんに、ランニングとの付き合い方と、再びスタートラインに立とうとしている今の気持ちを伺った。

仲真良広
2006年 世界で最大のシェアを誇る外資系ヘッドハンティンググループに入社。24歳の2008年2月に独立し、株式会社グローアップを設立。現在は株式会社Hajimari 執行役員。
「激太り」からはじまった、ランニングとの出会い
「もともとは野球ばっかりやってきた人間なんです。」
小学校から大学まで公式野球一筋。走るといっても、短距離やベース間のダッシュが中心で、いわゆる“長距離ランナー”ではなかった。
転機は24歳。自身の会社を立ち上げた時だった。
「創業して2年くらいで、激太りしたんですよ(笑)」
ストレスと会食の毎日。もともと171cm、70kgだった体重は、気づけば83〜84kgにまで増えていた。
「ある日、ふと写真を見たときに『こいつ誰だ?』って思ったんです。それがショックで、ダイエット目的でランニングを始めました。」
続かない自分をよく知っていたからこそ、あえて自分を追い込む方法を選ぶ。
「どうせ続かないだろうなと思ったので、半年後のフルマラソンに申し込んだんです。お金も払っちゃったし、もうやるしかないなと(笑)」
26歳の春。週150〜200kmを走る生活が、そこから始まった。
初のフルマラソンで3時間15分。9ヶ月でサブ3へ
4月に走りはじめて、10月には初めてのフルマラソン。結果は3時間15分。
「最初は『とにかく抑えて走れ』って言われて、抑えめに走り始めたんです。それでも最後まで余力があって、3時間15分でちゃいました笑 周りからもすごく驚かれて、『あ、自分、長距離いけるのかも?』と初めて思いました。」
そこから、わずか数ヶ月でタイムは一気に縮まる。
翌々月には3時間1分。さらに2〜3ヶ月後、1月の湘南国際マラソンで2時間50分台を出してサブ3達成。
「走り始めて9ヶ月でサブ3でしたね。ただ、そこから先を削るのが本当に大変でした。」
27歳から29歳までの数年間は、月200km。ベストを出したシーズンの直前3ヶ月だけは、月300kmまで走行距離を増やした。
「そのシーズンは、10〜1月の4ヶ月くらいは月300km走っていました。僕の場合、時間の制約もあるので、300kmが上限。その中で、どういうメニューを組むかをすごく考えていました。」
ポイント練習は週1〜2回。1000m×5〜7本や400m×10本のインターバル。
週末はハーフやフルの大会を“練習代わり”に走る。
「練習で30km走ろうと思っても、25kmでやめたくなるじゃないですか(笑)だから大会に申し込んでおいて、そこで本気で走る。僕にとってレースは、いちばん真剣に追い込める“練習場”なんです。」
29歳のシーズン。当時の福岡国際マラソンの参加基準タイムだった2時間42分を目標に練習を重ね、東京マラソンで2時間41分。生涯ベストが生まれた。

子どもが生まれて、ランニングから「一歩引いた」10年
しかし、その直後に人生のフェーズが変わる。子どもが生まれ、家族との時間を一気に増やすことに。
「奥さんにちゃんと向き合わないと一生やばいぞ、って思って(笑)そこからは家族優先に振り切りました。」
頻度も週1回走るか走らないか。それでも「毎年フルマラソンだけは1回出る」というルールだけは守り続けた。
「タイムはだいたい4時間切るくらい。全盛期みたいに“タイムを削る戦い”ではなくて、年に一度の『ちゃんと走る日』みたいな位置づけでしたね。」
24歳で起業した会社は、仕事も順調に忙しくなっていく。日々の会議、クライアントとのやりとり、そして家族の時間。
ランニングは、かつてのようなメインテーマではなく、生活の片隅で静かに灯り続ける“年に一度の約束”のような存在になっていった。
会社売却、娘の成長。「もう一度、本気で走ろう」
再びスイッチが入ったのは、2022年。10年以上かけて育てた会社を事業売却したタイミングだった。
「前の会社を2022年12月に売却して辞めたんです。娘も10歳くらいになっていて、少し手が離れてきたタイミングで、『もう一回ちゃんと走ってみようかな』と思いました。」
そこから2022〜23年シーズンは、再び本気モードに。2023年2月には、10年ぶりとなるサブ3(2時間59分)を達成する。
「10年ぶりのサブ3は、素直に嬉しかったですね。でも同時に、『ここで終わりたくないな』とも思って。」
その後の2シーズンは3時間8分、3時間10分。
「そこそこ走れる40代」で終わるのは、どこか自分らしくない。
「なんとなく“そこそこ速いおじさんランナー”で終わるのは嫌で。東京マラソンを走り終えたときに、『ここから2年間かけて、もう一度2時間41分を目指そう』って決めました。」
ランニングは「ひとり会議」の時間
では、今の仲真さんにとって「走ること」とは何なのか。
「目的はいくつかあります。ひとつは、もちろん体型維持と体力づくり。会食も多いので(笑)、走らないとすぐ太るんですよ」
もうひとつは、仕事や人生の「考え事の時間」だ。
「携帯は持たずに、外を1時間くらい走るのが好きなんです。走り出す前に『今日はこの案件について考えよう』とか
『この決断をどうするか決めよう』ってテーマをひとつ決めてから走る。走っている1時間は、完全に“ひとり会議”ですね。」
走っていない10年間も、この「考えるために外に出る」という習慣だけは続いていた。
「考え事があると、とりあえず外に走りに行く。みんなが散歩するような感覚に近いかもしれないですね。頭を切り替えながら、自分だけの時間に戻る感じが好きなんです」
コースは、四ツ谷の自宅から外苑、そして皇居へ。
「家が四ツ谷なので、外苑と皇居がそれなりに近いんです。外苑の1.3km周回を走ったり、もう少し長く走りたい日は皇居まで行ったり。昔はランステに荷物を置いて走って、また着替えて仕事に戻る、みたいな生活もしてました。今は朝の時間に走るようにしています。」

40代の身体と、はじめての「怪我」
一方で、29歳の頃とは違う“体のサイン”も、確かに感じている。
「正直、疲れはだいぶ溜まりやすくなりましたね。マラソンの追い込み練習を2〜3日続けていたところ、左のお尻まわり──梨状筋あたりを痛めてしまい、3ヶ月ほど走れない時期がありまして。しかも、この前もまた梨状筋周りと腰を痛めてしまって・・・。」
コンディションの調整もなかなか大変なのだ。
「20代の頃は、どれだけ追い込んでも、寝たら治ってたんですよ。でも、もうそういう年齢じゃないんだなって。ちゃんとケアしていかないといけないお年頃なんだなと感じました」
加えて、タイムを狙ううえで避けて通れない問題が「体重」。
「今は身長171cmで、体重72kgくらい。ベストを出したときは65kgだったので、あと7kgくらいは落とさないといけない。正直、一番大変なのはここですね」
20代の頃は、しっかり練習して昼食の炭水化物を抜けばスッと体重が落ちた。今はそう簡単にはいかない。
「もう、いよいよお酒をやめるしかないのかなと(笑)本気でどこかで腹をくくらないといけないな、とプレッシャーは感じてます」
自己ベストを出すために考えている秘策
ランナーとしての悩みのひとつが、「足型」だ。
「僕、足がけっこう太くて、幅広で甲も高いんですよ。だから、正直今までのシューズは全然合ってなかったんです」
それでもここ数年のフルマラソンで履いてきたシューズ。その理由は“いちばん弾む”から。そんなタイミングで出会ったのが、CRAFTのシューズだった。
「CRAFTのシューズって、比較的幅広なんですよね。海外のブランドなのに、こんなに幅広なのは珍しいなと思って。今回Kype Proで走ってみて、今までのシューズとこんなに違うんだとびっくりしました。自分の走り自体が変わりますね。」
Kype Proとの出会いによって、2時間41分への道筋が見えてきた。10年前のベストタイムに挑むために、“今の自分”が持つ資源を使ってどう攻略するか、まるで戦略ゲームをやっているように楽しみながら緻密に計画を立てていく。
「道具の進化は、素直に利用したいですね。前のシューズのままだったら、ベストを塗り替えられるロジックがないんですよ。でも今は、カーボンプレートとかミッドソールの進化もある。そこで自分の経験と掛け合わせたら、本当にいけるんじゃないかって思ってます。」

コミュニティとこれから。「2年後の東京マラソン」に向けて
これまでのランニング人生の大半は、「ひとり」で走る時間だった。
「走り始めてすぐ、社会人ランニングチームには入ったんです。そこで今の奥さんと出会ったりもしたんですが(笑)、最近はほとんど顔を出せていなくて。今は基本、自分でメニューを組んで、一人で走っています」
一方で、最近になってコミュニティの力も活用し始めている。
「最近は、仲のいいランナー仲間と一緒に走って、きちんと追い込むようにもなってきています。他者からのアドバイスがあるありがたみを感じています。」
レースプランも、すでに頭の中では整理されている。
「来年は、1月に新宿ハーフ、3月の静岡マラソンをターゲットレースにしています。フル2本とハーフ3本くらいを、練習も兼ねて走るイメージです」
そして、その先に見据えているのが2年後の東京マラソンだ。ベストを出した大会と同じコースで、今度は42歳の自分としてスタートラインに立つ。29歳の頃よりも、仕事も、家族も、責任も増えた。だからこそ、走ることでしか味わえない達成感を、もう一度全力で取りに行く。
「2時間41分を超えられたら、すごく気持ちいいと思うんですよね。
20代の自分に『今の自分でもまだ戦えるぞ』って言ってやりたい。
そのために、この2年間はちゃんと走ります」
ランニングは、ただの趣味でも、健康のためだけでもない。
日々の仕事を支え、家族との時間をより豊かにし、自分自身と向き合うための「長い対話」のようなもの。
42歳のランナー・仲真さんは、新しいシューズとともに、再びスタートラインに立とうとしている。

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