走ることは、記録を競うだけではない——そんな当たり前のことを、改めて体験として届けようとしている人がいる。ランニンググループ「Leaps & Bounds」を主宰する喜多芳久さんだ。
東京・大阪の二拠点で約50名のランナーを指導する喜多さんは、怪我のない走りをテーマにしながら、一人ひとりの飛躍を支えるコーチングスタイルを貫く。
今回はCRAFT、R HOTELとコラボしたランニングイベントを企画。「走る×回復する」という新しいランニング体験を提案し、走ることとリカバリーを一体化した新しいイベントの形に確かな手応えを感じたという。
CRAFTシューズの性能、ホテルを拠点にした新形式イベントの可能性、そしてLeaps & Boundsが描く未来について、率直に語ってもらった。

喜多芳久(きたよしひさ)さん
ランニンググループLeaps & Bounds主宰。
室内3000m年代別日本記録
世界マスターズ陸上選手権ハーフ 9位
アジアマスターズ陸上選手権10km 5位
SCOREマラソン 優勝
クアラルンプールマラソン フル/ハーフ ベテラン2位
怪我が、コーチとしての原点になった
高校時代は陸上競技、大学ではトライアスロンに打ち込んだ喜多さんだが、競技生活は交通事故によって一度断ち切られたという。
「怪我が治ってから、マラソンをやり始めました」と振り返る。社会人になってからも走ったり休んだりを繰り返し、最長では8年ものブランクがあった時期もあるが、走り始めてからは今日まで続けている。
そんな自身の経験が、Leaps & Boundsを立ち上げる動機になった。海外駐在から帰国した際、現地で一緒に走っていた仲間から「サブ3を達成したい」という声が上がり、「ならば私がサポートしよう」と2024年にチームを結成した。
グループ名の「Leaps & Bounds」は、株式などで使われる「急上昇・爆上げ」を意味する英語表現から取った。
「チームが掲げるテーマは『怪我なく、そして飛躍する』。自分自身が怪我で大事なレースに結果を出せなかった悔しさがあったからです。メンバーには正しいフォームを身につけて、ターゲットのレースで思いっきり走ってほしいと思って、このテーマにしました」。
セミパーソナルにこだわる理由
現在、チームには東京・大阪合わせて約50名が在籍する。2時間20分切りを目指す上級者から、フルマラソンをまだ2回しか走ったことがない中級者、さらには初心者まで、幅広い層が集まっている。
他のランニングチームとの一番の違いは、セミパーソナルにこだわる指導スタイルにある。
「ペースメーカーがいるだけで、技術までは教えてくれないようなチームでは、厳しい練習を消化して一時的な達成感を得られても、成長につながるスピードは遅い」と喜多さんは言う。
Leaps & Boundsの練習では、まず「動きづくり」に約30分をかける。短距離選手のフォームを理想としながら、「スピードは落ちても、そのフォームのまま走り続けられる状態に近づけたい」という考えに基づいている。練習で走る距離は多くても十数キロ程度。「30キロ走、20キロ走をメインとするチームが多い中で、まずフォームを固めることを優先しています」。

ただ走るだけじゃない。リカバリーまでデザインされた、新しいランニング体験
今回、喜多さんはCRAFT、R HOTELとコラボし、ランニングイベントを企画した。走った後にホテルのサウナや浴槽施設、ヨガスペース、ジムを活用するという構成だ。
「とても気持ちの良い休日を過ごすことができた、とメンバー全員が言ってくれました」と喜多さんは振り返る。ただ気持ちいいだけではなく、そこには確かな理論があった。
「ある程度の強度でトレーニングした後は、筋疲労だけでなく脳疲労も起きます。自律神経が乱れてしまうので、それを整えるためにサウナはとても良いツールです。整うことで睡眠の質も高まり、身体の回復も促される。本当に良い循環だと感じました」。
ホテルの施設にはマッサージガンやストレッチポールも完備されており、リカバリーへの配慮が行き届いた施設だと好印象を受けたという。「若い頃はケアを怠っても自然に体調が戻ってくるけど、年齢を重ねると回復が遅くなる。メンバーにもリカバリーの大切さをずっと伝えてきているので、今回のような形は理想的でした」。
参加費については、「サウナやお風呂、ヨガなどの施設利用料だけでなく、タオルも込みの価格設定としたので、妥当だと思います。当日はサプリメントやエネルギージェル、ドリンクの提供を行い、お得感も出せたのでは」と話した。
CRAFTのシューズが指導の「導入編」になる
今回のイベントでレンタルシューズとして使用したのは、CRAFTの「Pacer/Pacer2」シリーズだった。実は喜多さん自身がすでにチームメンバーに愛用を勧めており、フルマラソンの本番で使うメンバーも複数いるほどだ。
「あらゆるスピードに対応してくれて、使い勝手がいいシューズです」と喜多さんはPacerシリーズを評する。今回初めて試した参加者からも「ソールがちょうど良い硬さで気持ちよく走れた」という感想が寄せられた。
「柔らかすぎるシューズはグニャッと潰れる感覚があるんです。反発をもらって走りたいから、ある程度の硬さは欲しい。それがカーボンシューズに向けた走り方の準備にもなるので、導入編としても非常に適したシューズだと思っています」。
また、指導者の立場から、シューズとフォームの関係についても率直に語ってくれた。
「2020年頃から厚底シューズが登場して、業界の常識を大きく塗り替えました。ただ、記録向上の一助になる一方で、怪我も増えてきた印象があります。メーカーの意図を理解してシューズを使いこなすためにも、まずフォームを固めることが大切。基礎フォームが定まれば、どのシューズにも対応できるようになります」。
今後CRAFTに期待することも聞かせてくれた。「Pacerのバランス感は次のモデルにもぜひ残してほしい。トップモデルのKype Proは本当に足がよく回るのですが、他のメーカーと比べると少し重量があるので、軽量化を進めてもらえると嬉しいですね。また、日本ではまだあまり展開のないアパレルラインも期待しています」。

旅ランから世界へ——Leaps & Boundsの次のステップ
イベントを通じて、喜多さんはホテルを拠点にしたランニングの可能性に確かな手応えを感じた。
「たとえばリゾートホテルのように、月曜の朝はヨガ、水曜はランニングというようなアクティビティのタイムスケジュールがあれば、宿泊しながら参加できる。そういう形ができると素晴らしいと思います」。
さらに、東京・大阪以外の地域のランナーから「参加したい」という声がSNSを通じて届いていることもあり、「宿泊とランニングイベントを組み合わせた旅ランのような形も面白いかもしれません」とアイデアは広がる。
チームとして海外遠征や第3・第4の拠点展開も視野に入れる。「元々海外駐在経験のあるメンバーが多いため、海外レースの遠征もやってみたい。国内でも大阪をもっと強化していきたい。走ることの楽しさと、正しく続けられる環境を、もっと多くの人に届けたいと思っています」。
最後に、Leaps & Boundsに興味を持つ読者へメッセージをもらった。
「私たちのチームは、一人残さず、全員を怪我せず目標達成に導いていきます。ご興味を持たれたら、ぜひ一度練習にお越しください」。
Leaps & Boundsの最新情報はInstagram(@leaps_and_bounds2024)またはe-moshicom(イー・モシコム)のイベントページからご確認いただけます。

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